2009年10月8日木曜日

再生の道を誤る?自民党新体制

自民党は谷垣新総裁の下、新たなスタートを切った。先の衆議院選挙では優秀な中堅・若手が落選し、党の不良資産とも言える守旧派が比例区で復活当選している。このため、党再生のプロセスがどのように進むか非常に関心がある。

どの自民党議員も解党的出直しとか、保守層支持を取り戻す政策を訴えるとか、地方組織の建て直しなどを謳っている。個別に見れば、どれも党再生の道としてはその通りだと思う。しかし、自民党は大きな過ちを既に犯している。それは、先の総裁選で河野氏が訴えた解党的出直し策を葬り去ったことである。更にその河野氏を抑える目的で森氏が暗躍し、西村氏の立候補を働きかけたことである。不透明な派閥力学、守旧の体質・構造が実際にはまったく変えられていないのである。

自民党は抱えている問題の本質に切り込んでいけていない。一部の報道機関が先の衆議院選挙敗北の原因に、「自民党総裁や閣僚の自責点」を挙げているが、これは再生の方向を見誤らせている。自民党が抱えている問題は大きな氷山のようなもので、根っ子は、族議員と称する利権を縦にした集団と裏で党を操る黒幕に象徴される、動脈硬化した古い党の体質である。
そして氷山の一角として表に見えてきていたものの一つが、政官業の鉄のトライアングルといわれる利権構造の癒着である。国民の税金で私腹を肥やす政治をし、国民を蔑ろにしてきた自民党にNOを突きつけたのが先の衆院選挙結果なのだ。

自民党がこれから進むべき道は1955年結党以後年々硬直化していった組織のペレストロイカである。旧ソ連でも戦後40年以上続いてきた共産党組織の解体に多くの血と汗を流したが、自民党も同じように古い組織の新陳代謝を図るには大掛かりな手術が必要なはずである。
しかし、残念なことだが、これまでの自民党の動きは、
1. 衆院選挙での自民惨敗判明後すぐにスキャンダル追及の話しを口にした大島氏と町村氏が新体制に大きく影響を及ぼす構造になっている。
2. 谷垣氏は政党政治をやろうとして、政策通の加藤鉱一氏を予算委筆頭理事に内定したが、その目論見がもろくも町村氏の横槍で崩れてしまった。そしてその理事に町村氏が就いた。
3. 総裁選では過激なまでに、黒幕一掃を訴えた河野氏であったが、結局その声は取り上げられず、自民党が変わるという姿勢が潰された。
4. 次の参議院補選での公明党票取り込みのお願いをまたしてもやった。結果的には公明党の同調が得られなかったようだが、一から自民党を立て直す気骨が見られない。自民党の弱体化をもたらした3バンの麻薬から抜け出そうとする努力すらしていない。
国民不在の対応を相変わらずしている。

実は1993年の細川政権誕生で下野した際にも、党組織を再生させる良い機会があった。1980年代後半から細川政権誕生までの当時、自民党と社会党は収賄事件を起こし、政治不信が大きな社会的問題になった。国民の審判により、自民党と社会党は大きく議席を減らしたのであるが、自民党がやったことといえば、ご存知のように党組織の改革ではなく、細川氏の佐川急便グループからの借入金処理問題を政権発足の2ヶ月後の10月から徹底的に追及し、そして予算審議拒否を行なうことだけだった。勿論この問題は、細川政権崩壊後はうやむやになってしまう程度のものに過ぎなかったのだが、姑息な手練手管で政権の座にただ戻ろうとしたのだ。

また自民党は社会党とともに政治改革関連法案を否決さえした。世論を無視する暴挙を行ったのである。そして政局を混乱に落としいれ、政党政治の成長の芽を摘んでしまった。結果として無党派層が大きくなり日本の政治が停滞するという大きな痛手を負ったのだった。そのツケが今となっては大きく自民党自身に重く圧し掛かっているわけだが、勿論国民の生活も政治から置き去りになり、また日本経済の国際社会における地位の低下も甚だしく顕著になった。

こんな自民党を政権の座に復帰させたことは国民の大きな反省材料であるが、当時それに代わりうる受け皿が無かったのも事実であった。
しかし今回は違う。事前に十分に政権交代を準備した民主党がいる。そして、硬直化した危機的状況にある日本を救うために、「政権交代」という大きく舵を切る選択を国民がしたのである。是非ともこの大きなうねりを継続し日本を改革し、日本を甦らせないと本当に沈没してしまう。

しかし、今の自民党にはその危機感が見られない。今回の新体制を見る限りにおいては、またしても1994年に政権の座に戻ったのと同じ流儀を取ろうとしているかのようだ。
例えば、政治と金の関係で、収賄事件がおきているわけではないのに、鳩山首相の政治献金の処理問題を最重点に置こうとしている。政治を混乱させて予算成立を阻み民主党の足を引っ張ろうとしているかのようだ。
半年前まで景気対策が最重要だと言っていたのは何処のどいつだ。社会保障基盤の立て直しにしても、税金の無駄使いにしても大きくメスを入れなければならない状況が目の前にあるのに、やはり自民党にはこれらが見えていないようだ。

こんな自民党には参議院補欠選挙も含めて国民は「大喝」を食らわせるべきだ。国民は自民党が国民生活に密着した政策論議をしっかりと行っているか、また国民生活をよりよい方向に持って行こうとしているか監視をすべきだ。スキャンダル追求だけの混乱を意図した対応には断固として、国民は立ち向かうべきだ。それが結果的に自民党を真に立ち直らせることに繋がるのだ。そして成熟した政党政治の実現に向かって一歩前進するのだ。

「政権交代」を選んだ我々国民は覚悟を持って「政権交代」を育てる責任があると思う。

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