2009年7月20日月曜日

国際政治でもメッセージの出せない麻生政権

廃案に追い込まれることになった「北朝鮮貨物検査特別措置法案」について、廃案になったからこそ逆に浮かび上がった政府・自民党の真意の不透明さが見えてくる。そして本来なら北朝鮮の核実験に対する強い「核不拡散のメッセージ」をラクイラサミットで出すべきだったのに出せない自公政権の問題も改めて見えて来たと言うべきだろう。

以下検証する。
自民党は「北朝鮮貨物検査特別措置法案」の廃案を民主党の参院での審議不同意によるものと非難の口実に使ったが、実は政府与党自体もこの法案の成立に本腰を入れてはいなかったということが、国連安全保障理事会での北朝鮮制裁決議1874が採択されてからの一連の動きの中で見えてきたからだ。

そもそも北朝鮮制裁決議1874が何物であるか、今一度整理しておこう。
これは北朝鮮の2度目の核実験に対して取られた措置である。ここで強調すべきことは、この制裁は「核拡散の抑止」という本筋を実効的に進めていくことを狙ったものである、ということである。

そこで、制裁決議には大きく2つの内容が盛り込まれようとした。北朝鮮船舶への公海での「臨検」強化策と金融制裁である。
しかし、北朝鮮船舶への公海「臨検」強化策は、中国の反対で、「義務化」でなく「要請」となった。この時点で、この措置の実効性が弱められた。臨検は戦闘行為に結びつく危険性が高いためだ。
一方、核・ミサイル開発に関連する貿易の決済を封ずる、北朝鮮の組織・個人への資産凍結などの金融制裁強化策は、実は重要な措置であると言う認識で一致していた。1874決議採択後30日以内に追加の措置を決定する制裁委員会でもこの追加措置案を決め、中国も同意することになった。勿論日本政府もこの措置案を推進してきた。この追加措置は北朝鮮高官の渡航禁止にまで踏み込んでおり、色々な意味で制裁の実効性が期待されている。

このように見てくると、もし日本政府が本気で「臨検」を推進したいのなら、ラクイラサミットで米国とともに中国・ロシアを説得する行為に出るべきだったと思うが、そのようなアクションを麻生首相は一切取らなかった。取れなかったと言うべきかも知れない。
それどころか、オバマ大統領がサミットで「核兵器無き世界」に向けた包括戦略の支持を訴え、支持を取り付けたのに対して、麻生首相は何をやったと言うのだ。唯一の被爆国である日本が国際舞台でメッセージも出せずに、ただただ臨検を進めようとしたとなると一体日本は何を考えているのかと言うことになりはしないだろうか。

今回の廃案は、そのような不透明さを抱えたままの審議であったということが図らずも露呈されることになったと言うべきではないだろうか。

さて日本国内に目を向けると、ラクイラサミットで国益を損ねた政権を信任する自公両党という構図になり、自公両党はますます何を考えているのか分からない、と言うことになる。
もういい加減、表面的なレベルに留まっている政治はやめにして欲しい。

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