2009年8月20日木曜日

国民が豊かになる経済成長とは?

麻生首相は2009年衆院選挙の争点として「経済成長政策の実績」と「成長戦略」という言葉を多用しています。しかし話を聞けば聞くほど、この人はまったく経済に無知な人だなと思います。これだけ経済に無知な人に景気対策を、また国の経営を任せてきたこと事態が、日本の失敗です。それにしても、「経済」という単語を並べるだけで、あたかも分かっているかのように国民に説明するのは、誤った情報を伝えることになり、国民に対する背信行為以外の何者でもありません。発言・言葉に責任の無い証拠です。「責任力」が聞いてあきれます。

さて、経済の実態を見る必要があります。公示後の演説で、経済成長政策の実績として内閣府から公表された2009年4~6月期の実質GDP(国内総生産)成長率の年率換算値3.7%を取り上げています。この値は年率換算ですので実際の4~6月期の実質GDP成長率は前期比で0.9%です。実質GDP内訳で公共投資の伸び8.1%および輸出の伸び(特に中国向け)6.3%がありますが、しかし、物価変動の影響を含む名目GDP (これは生活実感に近い指標です)では前期比でマイナス0.2%です。つまり、名目GDPは成長で無く、引き続き後退しています。さらに加えて名目と実質が逆転しており、これはデフレ圧力が高まっていることを意味しています。経済は成長モードでなく縮小モードになりかかっています。

その証拠に、実質GDP成長がプラスになったといえども、失業者の割合は増え続けています。2009年4月、5月、6月の完全失業率は5.0%、5.2%、5.4%です。この5ヶ月で1.3%も増大しています。
また、失業率と並び経済の動向を判断する上で重要な指標である、企業における「設備の過剰」は5期連続で過剰状態が続き、4~6月期の設備投資は前期比でマイナス4.3%です。

経済動向を見る指標である、「雇用の悪化」「設備投資の抑制」「デフレ圧力」全てが経済成長を示唆していません。ただ、「いざなみ景気」の時と同じように輸出で数字上実質GDPを押し上げているのです。
経済状況は、麻生首相が言うような「成長が国民実感にまだ至っていない」というような状況ではなく、経済官僚、民間エコノミスト皆様が、雇用問題が今後の最大の景気押し下げリスクである、として警戒しています。特に失業率に「企業内隠れ失業者」607万人を含めると完全失業率は13%程に達するとも言われています。仕事に従事していても賃金が前年比でマイナス8%でとなっており、また今年の夏のボーナスが1部上場企業ベースですが前年比マイナス18.3%となっており、「デフレスパイラル」の危険性が強くなっているのが実態です。

それを、麻生首相と自民党、および公明党は「目の前の景気対策」効果を自画自賛するだけで、これまでの景気対策を継続してやるとしか、今後の経済運営方針を説明していません。
これまで取ってきた経済運営が間違っているにも拘らず、です。

では何が間違っているかを次に示します。
この20年の間に、共産主義の失敗そして新自由主義の失敗も経験しました。歴史は、経済体制が脱イデオロギーへと進んでいくことを、示しています。
代わって、温暖化対策に代表されるように「地球との共生」を、また「新自由主義への規制」のもと、どのように貧困、格差と戦いながら民の豊かさを実現するかという、人類と経済の発展の歴史の原点に戻ることが求められています。
それにも拘らず、この10年間、自公政権は本来やるべき、またやれる立場にありながら、高度経済成長期以後の産業構造を変えるという「構造改革」をしてきませんでした。円安誘導で外需依存の古い産業構造を温存し、実質GDPの成長を求めただけです。1年前までは輸出依存の大企業やマネー資本主義の恩恵に与った金融業界が過去最高の収益を塗り替えるという「いざなみ景気」でした。

しかし、国民の生活レベルに関連する、国民一人当たりの名目GDPはOECD(経済協力開発機構)加盟国30カ国の中、1994年の2位、2000年の3位まではそれなりの位置にありましたが、2000年以降ランキングは下落の一歩をたどり、2006年18位、2007年23位です。この時期は小泉政権以降の時期に対応しています。つまり「いざなみ景気」の裏で国民一人ひとりの生活実感では、給与の削減、雇用の喪失などにも曝されてきており、生活苦が拡大してきたと思います。
勿論、世界経済に占める名目GDP総額割合でも2006年9.1%、2009年に8.1%の見通しで、1994年の17.9%と比較すると半分以下となっています。世界経済の中で、日本経済の存在感の低下・地盤沈下は鮮明となっています。

加えて、「いざなみ景気」の勤労者の汗は勤労国民へ還元されることはなく、国民一人当たりの名目GDPの数字以上に、働けど貧しくなるという「負の歯車に巻き込まれていく」状況が生まれてきているというのが実態だと思います。

最近は100年に一度の金融危機という言葉が麻生首相から聞こえなくなっていますが、1年ほどで景気が回復するなら、半年前にしきりと言っていた「100年に一度の金融危機」は何だったのでしょうか。
でもおそらく実態はそれに近いものになることを想定して経済政策を立てるべきで、「私どもの経済対策はあたった。(これまでの)経済対策を継続する」という自民党の見立てのレベルでは到底ないと思います。
1930年の世界恐慌では、第二の金融危機がヨーロッパで火を噴きました。今回もヨーロッパが危険です。欧州第5位の経済大国スペインの6月の失業率が18.1%に達しました。ユーロ圏16カ国の平均失業率でも9%を超えています。

歴史は当時のニューディール政策の処方箋を次のように教えてくれています。
(1) フーバー大統領は小さな政府に固執して連邦政府として財政出動をためらった。
(2) 加えて、恐慌の最中に赤字財政を改善しようとして傷を広げた。
(3) ルーズベルト大統領も当初、財政均衡を掲げたが、なし崩しにし、政府の景気刺激策を続けた。
(4) 財政発動を減らすと景気が一気に落ち込むという状態を繰り返したが、第二次世界大戦後の平和がやってきて始めて民間経済活動が自律的に回復軌道に乗った。
となっています。

今の日本でも1930年の時と同様に金融危機の第二波も見越して、当面は効率的な財政出動による景気刺激を進めると同時に、「経済の復活」と密接に関係する「政治の再生」による国民力の結集と「地域の蘇生」による中小企業力の拡充が大切だと思います。これこそ民主党の「経済成長戦略」になっているものだと思います。

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