2009年8月23日日曜日

経済成長戦略ー新国家像

昨日8月22日、日本テレビ番組「ウェークアップ!ぷらす」で2009年衆院選挙の争点<経済成長・財政再建>を取り上げ6党の代表を交えて討論を行っているのを見ました。司会の議論の問題設定の仕方・進行もよく、各党の考えかたや政策立案力の違いが浮き彫りにされ、いい番組になっていたと思います。6党の中でも民主党の福山哲郎 政調会長代理は日本経済の実情、問題点、民主党の政策をしっかりと定量的に掘り下げて説明しており、党の問題に取り組む真剣度が聞いているほうに伝わってきました。また、しっかりと勉強している、筋の通った若い政治家がいる民主党の若い力を見た思いです。
どこかの党の首相のように、定量的に経済を掘り下げた説明ができない、経済の実情をしっかりと自分の頭で考え、意味のある数字の連結として理解できていない、経済に対する直感的なセンスすらも感じさせない党とはまるで違います。

国の経済成長・財政再建・地域分権と地域経済・社会保障システムなどは多くの面を持ったサイコロの一つの面のようなもので、どれもこれもテーマとしては別々に取り上げられても、政策としては切り離されたものであってはいけません。そしてこれらをひとつ束ねているのが「政治力」だと思います。ここが重要なポイントで、これまでの自公政権の政策は各省の省益を反映した単なる政策の寄せ集めであり、それを束ねる政治が不在であるため、非常にいびつな形をした無駄の多いサイコロになっているというのが現状です。
今回の民主党提案のマクロ観はこのサイコロを無駄のない形に戻し、各々の面の政策を連結した政策として運営して行くというものだと理解しています。勿論サイコロの各面はマニフェストに書かれているように各々な色づけがあっていいものです。

昨日の福山さんは<経済成長・財政再建>という面を、しっかりと定量的に問題を捉え、かつ掘り下げ、それらを踏まえた政策として説明していました。

私は常々経済の数字の変化の意味を一生活者の目で見て、肌で感じて、考えています。
日本の経済成長をマクロ的に見た時、経済全体の供給力を表すといわれている潜在GDP(国内総生産)の成長率の推移が重要な切り口になると思っています。1990年には4%ほどありましたが、年々減少し、2000年には1%を切るくらいにまで低下しています。その後は1%前後で推移をしているのだと思います。そして、つい先日日銀が潜在GDPの成長率が1%前後より低下している可能性を指摘しており、またIMFも潜在GDPの成長率は金融危機を境にして低下していると警告しています。詳しい数字は公表されていませんがおそらく1%を下回っているのは確実な状況と思われます。

中身を見ると、潜在GDP成長率を構成する3要素(生産性、設備などの資本力、労働力)のうち、資本力、つまり設備投資が確実に1990年以降年々低下しています。それに加えて最近富に増えている失業率が潜在GDP成長率を押し下げています。
まず、国全体で設備投資が減っているということは、構造的な問題です。つまり、高度経済成長を牽引した産業構造からの政策的転換が出来ていなくて、そのまま低成長モードに入っているためだと思います。
また、設備投資が減少するということは、設備の稼働率低下も意味しており、労働者の余剰に繋がってきます。失業率の定義にあいまいさがありますが、企業内隠れ失業者も潜在GDPに反映させるべきで、そうすると内閣府の数字より実態は更に低い値になっている可能性があります。

成長戦略は、この潜在GDP成長率を如何に増やしていくかに尽きます。通常の成長率は実質GDP成長率をさしており、需要面の数字です。実質GDP成長率には輸出の影響が強く反映されますので、この数字は経済成長の構造的な問題を隠蔽してしまいます。

これまで自民党がとってきたやり方は、経済成長の構造的な問題の本質を国民の目から隠蔽し、その上で輸出依存型大企業の利益拡大で成長を演出することでした。このやり方がもたらした結末が、今我々国民が苦しんでいる、国民一人当たりの名目GDPの地盤沈下と所得再分配がなされない格差拡大です。

今回の自民党の公約もただ2%という実質GDP成長率の数字をあげているだけです。潜在GDP成長率を増やす施策については、まったく触れていません。これでは成長戦略になっていません。しかし麻生首相は成長戦略という言葉を使って国民を騙しているのです。まったく反省もなく小泉政権以降取られてきた円安誘導の輸出拡大政策を踏襲しようとするだけなのですが。

私は、日本経済の構造的な問題を解決するキーワードと方針は、
1. 中小企業力の底上げ
2. 多様化した雇用形態の活用
3. IT化の浸透と地域活性化
だと思っています。これにより潜在GDP成長率増加を目指すべきと思います。まず現状の2倍化を目標にしたらいいと思います。
中小企業は大企業の下請けという捉え方がこれまで強いですが、よく考えてみてください、今大企業といわれている会社も始めは小企業です。アメリカのベンチャ企業も小企業です。下請け的な環境から中小企業が大きく飛躍していくためにはインフラ整備をすることが政治的に重要です。
また、派遣という形態の労働力もこれまでの大企業の景気調整弁という捉え方から発想を変えて、むしろ労働市場の流動化のトレンドの先を行く雇用形態と位置づけ、積極的に活かしていく施策が求められていると思います。これに伴い、勤労者再教育システム、新しい雇用形態として社会システムに定着させる価値付与と他の雇用形態と同等の社会保障が受けられる仕組み作りが重要と思います。
私は上記の3点は民主党の雇用・経済対策の政策に繋がっているものと見ています。

今後の育成産業分野については、各党の皆さんはほぼ同様に環境分野、エネルギー分野、医療分野などを語っており、その通りだと思います。重要なのは各々の分野だけでなく、それらの分野でどのように国力に繋げていくかです。それは構造改革以外の何物でもありません。
「政治の再生」「経済の復活」「地域の蘇生」で統合的に改革することにより生まれる相乗効果で「日本列島新!改造」計画を進めることこそ民主党の戦略であるとマニフェストを読んで理解しました。

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